2026年1月31日に開催された第1回juju MUSICにおいて、シンガーソングライター/音楽プロデューサーの
高橋亨明さんと七ツ森ファミリークリニックの室谷院長が、地域の人々の「つながり」を音楽で紡ぐ企画「juju MUSIC」の理念と展望を語ったトークセッションが行われました。
満ち足りた人生を送るためには、医療や福祉のサポートを適切に受けることに加え、コミュニティでの居場所を持つことが重要であるという院長の思いから、カフェやヨガ、音楽、スポーツ、芸術を通した場づくりやコミュニティ形成を目指す試みが熱く語られました。
象徴的なプロジェクトの第一歩を記念して、ギター未経験の院長に高橋さんが選定したアコースティックギターが贈られ、「ゼロから一緒に始める」という参加型のプロジェクトの未来像が共有されました。
juju MUSICプロジェクトの発足経緯
高橋さんは司会者として、すっかりおなじみの顔となった室谷院長を盛大な拍手で迎え、登壇後、院長は高橋さんのウェルカムソングに対して「素敵でしたね」とコメントし、和やかなトークセッションが始まりました。両者の出会いは2025年8月、大和町のまほろば夏まつりの日に、クリニックの駐車場やカフェで行われた「なないろ音楽フェス」でのことでした。このときの打ち上げの際に出た「何か面白いことを一緒に」という話が加速し、〜なないろチャリティプロジェクト〜というサブタイトルを冠した「juju MUSIC」というプロジェクトが始動しました。出会いからまだ1年も経っていないそのスピード感に驚きの反応が上がる中、生活圏の中で医療と文化が緩やかに結びついている様子が具体例を交え語られました。
プロジェクトの理念と目的:地域と人をつなぐ「ゆるやかなつながり」
院長は冒頭、地域への深い感謝を表明しました。「この1年半、地域の方々に本当によくしていただいたことへの『ありがとう』を高橋さんの声を借りて伝えたかった」とイベント開催の第一の動機を語りました。そのうえで、juju MUSICのテーマを「地域と人と人を音楽でつなぐこと」と話し、「病気が治っても、ひとりでいればどうだろう。病気があっても地域で人とつながりを持って生きていけるほうが健康的だ。」と語り、健康寿命を延ばし人生を楽しむことの鍵は人と人とのつながりにあるとする自身の臨床的・実践的な見解を、エビデンスを用いながら提示しました。
理想とする関係性は「醤油や味噌をすぐ借りに行けるほどの密接さ」ではなく、「イベントに行けば顔を合わせられる程度のゆるいつながり」。室谷院長は、つながっている安心感を育む場をヨガやカフェなどのコンテンツを組み合わせて設計する構想を説明し、「スポーツや芸術を含めた取り組みの中で、今回がミュージックのことはじめ」と語りました。
高橋さんは、「ネットで解決策を検索しすぎると落ち込む。人に会うと楽になることがある」と共感し、密接すぎる関係の難しさにも触れたうえで、「困ったときは助けてと言える、そうじゃないときも日常を何となく伝え合える関係性が、この場所と音楽をキーワードに広がる」と展望を同じくしました。
参加型コミュニティの展望と象徴的な第一歩
当日のライブの後半では、院長が用意した打楽器や拍手を通じてお客さんも演奏に参加する形式が取られ、改めて参加型コミュニティの構築を目指す空気が共有されました。今後のイベントも「地域の文化祭のような、プロも交えながら聴く時間と繋がる時間が共存する場」であり、「みんなが『はじめの一歩』を踏み出すゼロイチがフェア」であるという構想が共有されました。高橋さんは「音楽という柱を、カフェjujuや七ツ森ファミリークリニックを中心に据え、ここ大和町でいろんなことができる」とjuju MUSICが持つ可能性を強調し、院長は「みんなと同じ土俵で一緒に作っていきたい」とコミュニティを共に創り出していく姿勢を力強く語りました。
象徴的なプロジェクトの第一歩を記念して、院長に人生初のギターがサプライズで贈呈されました。高橋さんは選定の過程を詳細に語り、形状がカッタウェイ(くびれた形)で、色と合わせて院長のイメージに合うことや、ケーブルが挿せるエレアコ仕様で初心者でも扱いやすい薄く細いネックのモデルであることを説明しました。国内メーカー「ヤマハ」を選んだ理由として「日本の四季に木材が適応しやすく、長く付き合える管理のしやすさ」を挙げ、さらに島村楽器とのコラボモデルで、入手可能時期が限定されていたことも選定要素だったと明かしました。購入店のスタッフが高橋さんが20代前半に通っていたライブハウスの音響担当者の息子さんだったという偶然の縁のお話も共有され、juju MUSICが大切にする「人のつながり」を体現するエピソードとなりました。ギタースタンドも併せて用意され、「飾るだけにならないように」と院長は実践を促されました。
院長は自身の音楽歴に触れ、ギターへの憧れはありながらも触ったことはなかったと明かし、スタッフにも「音楽やろうよ」と呼びかけ、当事者意識を持ってコミュニティを育てる意気込みを話しました。院長はギターのプレゼントに際し「このギターに出会うために生きてきたよう」と喜びを露わにし、高橋さんは「一年後のjujuミュージックでも先生がギターを持っているように、責任を持って伴走する」と宣言し、将来的な実演にも意欲を示しました。
「なないろプロジェクト」の包括的ビジョンと名称の由来
対談の締めくくりで、院長は「なないろプロジェクト」の全体像を語りました。「なないろプロジェクト」は、七ツ森ファミリークリニック、カフェjuju、ライノヨガ、jujuミュージック、スポーツ&アートなどを束ね、「年齢・性別(ジェンダー)・障害の有無に関わらず、すべての人が尊重される社会」を地域発で実装する構想です。特に障がい者スポーツ(パラスポーツ)を応援し、「大きなところから変えようとしてもなかなか変わらない。小さなところから地域の力で、なないろプロジェクトからパラリンピック選手を輩出したい」と夢を語っていました。
jujuの名称は二重の由来を持っています。ひとつは音楽ジャンルとしての「JUJUミュージック」で、これはギターと打楽器が主体の、コール&レスポンスを特徴とするナイジェリアの音楽です。高橋さんの魅力の一つがライブでのコール&レスポンスがであり、院長は「高橋さんとの音楽ともつながっている感じがして嬉しい」と語りました。もうひとつは私的な原風景で、院長の祖母が営んでいたお好み焼き屋「寿々(JUJU)」に由来しています。地域の人が自然と集まり、つながりが生まれ、祖母と会話を楽しみに行く場所だったという幼い頃の記憶を、カフェjujuで再現したいという思いがプロジェクトの核にあります。院長はクリニックやカフェのスタッフに対して「採血やコーヒー提供等の技術を第一にして慣れた作業で済ませるのではなく、人との時間や距離感を大切にしてほしい」と伝えており、医療・介護・文化(音楽、スポーツ、芸術、食事)のいずれにおいても人と人との関係の質を重視する姿勢を大切にしたいと語りました。
高橋さんについて院長は「プロデュース力がすごい。見えないところを想像してストーリーを紡ぐ点が優れている」と評価し、自身の診療で「患者さんご家族の話を聞きながら見えないところを想像して治療法を組み立てる」営みと通じるものとして捉えていると話ました。院長は「高橋さんは声も良く、ギターも上手い。歌詞もメロディも良い。人との時間や距離感を大切にしている。」と称賛し、「jujuミュージックをよろしくお願いします」と今後への期待を表明しました。高橋はユーモアを交えて「高橋jujuに改名してもいい感じ」と応じ、「音楽やカフェ、クリニックそのものだけでなく、その外縁にある『つながり合う可能性』がたくさんある試み」と総括しました。地域の皆さん(東北人の多くシャイだという前提)に「大丈夫、僕か先生がなんとかする」と呼びかけ、「そこで繋がった人たち同士の空気感が皆さんの御守りになったら嬉しい」と結び、トークセッションは大盛況のうちに終わりました。